川越の家のつくり方

川越の家の壁

呼吸する壁


特徴その① 洗濯物を部屋干ししても嫌な匂いが付かない

雨の日は洗濯物を外に干せないので、部屋干しをします。しかし、その部屋干しをしたら、室内の湿気が上がり、不快感が増すばかりでなく、衣服から生乾きの嫌な臭いがしてきたという経験がある方は多いのではないでしょうか。部屋干しをしたときに嫌な臭いがしてしまう原因は、洗濯物に残った汚れと雑菌にあります。普段から衣類には多くの汚れが付着しており、洗濯物が乾かずに、時間が経過してしまうとその汚れから雑菌が繁殖してしまうことで、臭いが発生しやすくなってしまいます。
呼吸する壁は、室内で発生した湿気を、外部に排出するため、室内の湿度は一定に保たれますので、洗濯物を部屋干ししても嫌な匂いが付きません。

特徴その② 良く寝れる

人間にとって、睡眠はとても大切なものです。寝つくのが遅かったり、朝起きてもぼーっとしている、という方も多いのではないでしょうか。良い睡眠をとるためには、寝室の環境を整えることも大切です。室温は、冬は18℃以上、夏は28℃以下がよいといわれています。湿度は40~60%が適切。そして、新鮮な酸素が必要です。二酸化炭素濃度の基準値は、1000ppm以下です。
そもそも人が一日に体に取り入れているもののうち、食べ物が7%、飲み物が8%に対し、空気は83%(重量比)と圧倒的に多く、そのうち室内空気は57%に上ります。そんな室内の空気が汚れていたら睡眠中でも呼吸が浅くなり、睡眠の質が低下します。
呼吸する壁は、室内で発生した二酸化炭素を、外部に排出し、新鮮な酸素を外部から取り入れるため、室内の空気は、外部と同じ程度に保たれます。常に新鮮な空気が供給されているので、良く寝れるのです。

特徴その③ 室内の空気がいつも美味しい

室内の空気を入れ替えるため、壁に換気口を設置と、24時間換気扇の設置が義務付けられました。しかし、新鮮な空気を取り入れることで、花粉やPM2.5も入り込みます。冬は換気口から寒い風が入ってきます。夏は暑い空気が入ってきます。室内の空気を機械的に入れ替えようとすると、同時に問題も発生してしまうのです。
呼吸する壁は、常に新鮮な酸素を取り入れてくれます。人間の呼吸で発生した二酸化炭素を外部に排出してくれます。また、ビニール袋など、化学物質で生成された物が、室内に持ち込まれた時も、発生した化学物質を外部に排出してくれます。なので、室内の空気がいつも美味しくて、森の中にいるような感覚です。

特徴その④ 風邪に掛かりにくくなる

新型コロナウィルスを主とする感染症が私たちの生活に多大な影響を与えてる今、壁の調湿力や抗菌力が見直されています。美観はもとより、調湿性、カビなどが生えにくい抗菌性のある呼吸する壁の構造を取り入れることで、健康で長生きできる環境を整えていただきたいです。
呼吸できる壁を採用した住宅に暮らしている人は、風邪に掛かりにくいと言います。子供が、学校や幼稚園で、風邪やインフルエンザに移っても、家で兄弟には移らない、親に移らないなど、風邪に掛かりにくくなるとおっしゃいます。

呼吸する壁の仕組み


①臭気の発生が何も無い状態

②室内空間で臭気が発生した瞬間

室内で臭気が発生した場合、室内の臭気濃度が高くなり、室内空間と通気する壁の表面の間に濃度差が生じる。

③臭気発生から任意時間経過後

呼吸する壁は、室内との臭気を吸着・透過するため、室内の臭気濃度が下がる。また、通気する壁表面と材料内部の間に濃度差が生じる。

④臭気発生から更に任意時間経過後

これらを連続的に繰り返すことで、最終的に室内で発生した臭気は外気に排出される。

⑤臭気発生から更に任意時間経過後

表面からの吸着及び内部への拡散は継続して行われていく。

⑥臭気発生から長時間経過後

通気する壁は、室内の臭気濃度差が無くなるまで吸着と透過を続け、外気へと通気して行く。

土壁の性能を、乾式工法に取り入れることができれば、現代住宅の性能が飛躍的に伸びる。


日本の伝統的な民家の壁は、土壁でした。もちろん土壁は、優れた呼吸する壁です。室内で発生した二酸化炭素を外部に排出し、新鮮な空気を室内に取り込んでくれます。物質は濃度が高くなると、濃度が薄い方へ移動する特性があるからです。土壁の性能を、乾式工法に取り入れることができれば、現代住宅の性能が飛躍的に伸びる。これが、呼吸する壁であり、呼吸する家です。

家づくり工房 壁平面図(標準仕様)

湿式工法

 土壁で家を造ると、それが乾くまで半年くらいかかります。昔は、一年間建具も入れず、壁と屋根を施工した状態で風にさらしていました。
 仕上工事は土壁が乾燥してからの仕事でした。そうしないと湿気の多い日本ではカビだらけになってしまいます。これは木材にとっても同じことでした。現在のように乾燥材が現場に入ることはありませんでした。これを湿式工法といいます。

乾式工法

 現代では、湿式工法のように時間をかけることは、工事や住まい手の経費がかかるだけなので、より短い工期での工事が望まれるようになってきました。それが乾式工法です。工場で加工されたものを現場で組み立てる工事方法です。そこでは、多様な建材が使われるようになっているのですが、部分、部分の対応のため、建築全体の構造を検証することなく今に至っています。その結果、空気を閉じ込め、「呼吸できない家」が生まれてきたのです。

箱木家・1000年住宅

兵庫県神戸市北区山田町に現存する箱木家は、千年以上の経験を持つ土壁や板壁の家です。シックハウスもなく、壁体内にカビが生えることもありませんでした。伝統工法で使われてきた土壁の性能を、現代の乾式工法に取り入れることができれば、現代住宅の性能が飛躍的に伸びるのです。

呼吸できない壁


呼吸できない壁①
合板や構造用合板を貼る

外壁の構造耐力を高める目的で、柱・間柱・梁の構造部分に合板や構造用合板を固定する工法が多くあります。合板は、薄い板を何層も接着剤で固めますので、極めて気密性が高いため、壁が呼吸できなくなります。ただし、通気層の外側の外壁仕上げの下地に合板を利用することは、問題ありません。

呼吸できない壁②
断熱材に発泡ウレタン

断熱材として、柱・間柱・梁の空間に発泡ウレタンを吹込む工法があります。完全な気密状態となり、壁は呼吸できません。建材として再生不可能な素材です。

呼吸できない壁③
透明の気密シートを貼る

壁下地に気密性を高めるために、透明の気密シートを採用している住宅は、非常に多いです。低コストで高気密のため、エアコンの効きが良くなるため、喜ばれます。しかし、ラッピングした状態を直接見れば、誰も、ラッピング空間に住みたいとは思わないのではないでしょうか。建材として再生不可能な素材です。

呼吸できない壁④
内装にビニールクロス貼る

安価な内装材として、多くの住宅やマンションに採用されています。気密性が高く、綺麗に仕上がるため、喜ばれます。呼吸ができない建材であるばかりでなく、化学生成品のため、アトピーやシックハウスの原因となるホルムアルデヒドなどの化学物質を放出します。

熱容量を理解し活用しよう


世界の建築を学べば学ぶほど、日本のUa値計算というルールに疑問を感じています。(世界では非定常計算が行われ、日本は簡易計算の定常計算です)その一つが熱容量です。ある程度断熱化された住宅は、熱容量の高い家のほうが圧倒的に冬暖かく、夏涼しくなります。

わかりやすいのが冬です。冬の事務所は暖房しても足元が寒いですよね。あれは冷輻射熱を浴びているからです。冷たい輻射熱が体感温度を下げているからです。試しに事務所の暖房機を一晩消さずに帰ってみてください。翌日は足元からぽかぽか暖かいはずです。もし、事務所の床がビニール素材だったらあまり効果は期待できません。無垢フロアーなどの自然素材は熱容量が大きく、蓄熱します。

床だけではなく、天井も壁も、ドアも家具も、ビニール素材より自然素材のほうが圧倒的に熱容量が高いですから、輻射熱効果が期待できます。また、壁内の断熱材を自然素材にすることがその家の熱容量を一番上げることができますから、機械的でない、暖かな居住空間をつくる事ができます。

沸かし湯と温泉の違い

熱容量の高い空間は、輻射効果で体の芯まで温まります。芯まで温まると免疫が上がり、風邪などの病気にかかりにくくなります。新型コロナウィルス対策にもなります。芯まで温まると、ちょっと外へが薄着になります。僕も自宅から歩いて3分のコンビニへ行くと、寒くないですか?とよく笑われます。

僕たちはこれを、沸かし湯と温泉の違いと呼んでいます。
また、熱容量が高い家は、窓を開け空気を入れ替えても、室温は下がりますが、窓を閉めると暖かさは一瞬で戻ります。

夏の2階がムンとする暑さを解決しよう

夏に階段をトントンと上がると、2階付近から急にムンとする暑さを誰もが経験していると思います。原因は、屋根からの熱伝導と窓を含む壁からの熱伝導。それと窓からの日射侵入で内装が温められる輻射熱です。夜には屋根裏が温められた輻射熱が部屋に影響を及ぼすのも原因の一つです。これらすべてに対して対応しなければ、夏の2階の暑さは解消されません。

基本は断熱性能を上げる事です。特に屋根面は壁面の2倍の断熱性能を必要とします。ここまでは断熱をうたっている住宅会社なら当然やっていると思いますが、ほとんどやっていないのが、軒を出す、庇を付けるなどの日射遮蔽対策と、遮熱シートを張ると言った輻射熱対策です。Ua値だけの判断では、夏の暑さは解消できません。